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最高裁判所第一小法廷 昭和36年(あ)2104号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人秋山博の上告趣意第一点について。

所論は違憲をいうが、実質は原審の裁量に属する証拠の採否を非難する単なる訴訟法違反の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない(裁判所は、当事者が取調べを求めた証人のすべてを採用し、取調べを行なう義務があるものではない。憲法三七条二項は、裁判所にかかる義務を課した趣旨でなく、証拠の採否は、裁判所の裁量に属するものとすることは、当裁判所の判例とするところである。)

同第二点について。

所論は、原判示に副わない事実を前提とする単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない(原審の認定した事実によれば、本件自動車は、所論免税通関前に被告人らに譲渡されたものであることが明らかであるから、原審が所論特例法一一条、一二条を適用すべき事案でないと判断したのは正当である)。

同第三点及第四点について。

所論は、事実誤認の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない(原判示は相当である)。

同第五点について。

所論は、事実誤認ないしはこれを前提とする単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない(たとえ道路運送車両法による未登録の自動車であっても、それにつき所有権の移転ができないわけはなく、また使用できないわけのものでもない-同法一〇八条一号の罰則はあるが-それゆえ原審がその認定した事実関係の下において、所論被告人の行為をもって関税法上の引取りがあったものと判断したのは正当である)。

同第六点について。

所論は、単なる法令違反の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない(原判決は、本件公正証書は真正に成立したものであると認定しているのであって、原審の右認定は挙示の証拠に照らし首肯し得なくはない。たとえその作成に当って所論の如き手続上のかしがあったとしても、刑法一五七条一項の法意より見て、本件公正証書を不成立のものとならしめるものではない旨の判断も正当として首肯し得る)。

よって、刑訴四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 高木常七 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎)

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